+たまたまインタビュー + vol.26「愛知県美術館の主任学芸員の越後谷卓司さんのお話 その2」

インタビュアー:フィリップ(ワラビモチ愛好会会長、IAMASアカデミー5期生)
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今回は、愛知県美術館の越後谷卓司さんです。2021年のはじめ頃にたまたまアートラボあいちに展示を観に行った時にお会いしたので、インタビューをお願いしました(インタビューは3/14に芸文センターにて)。
フィリップ(以下P):「なるほど。80年代は新しいものが一杯あったいい時代というイメージがあります」E:「僕は中学から大学にかけてが80年代だったんですけど、実体験からいうと、80年代は前半と後半で全然違うんです。前半は下積みで長くやってた相米慎二とか、漫画でも大友克洋とかが出てきて新しいことが始まるんじゃないかという雰囲気があったんです。後半になってみるとバブル景気の影響で、映画だと異業種の監督が登場する。例えば高田賢三が映画撮ったりとか。」P:「あー確かにそっちの方がイメージ強いですね。異業種の人が音楽やるとか。」E:「その中で一番成功したのは北野武。」P:「へえー」E:「だから、80年代で何か新しいことが起こりそうな感じがあったのは特に前半の方で、ただそれが花開いたのかとか、どう定着したのかとかいうとちょっと心もとないですけどね。」P:「あまりそういう視点で見たことがないので面白いです。」
P:「実験映像について少し勉強しようと思ったのですが、幅が広すぎてどう説明していいのか…。」E:「テレビでなかなか取り上げられないということもあるけれど、歴史的な後付けがまだなされていないのが、実験映画ってよくわからないと言われてしまう一つの理由なんですけど、はっきりしているのは1920年代のアバンギャルド芸術の中の新しいメディアとしてのフィルムにアーティストとか映画監督が飛びついて、マルセル・デュシャンなんかもそうです。そういう時代があってもう一つが戦後のアメリカでブラッケージとかメカスとかが出てきて彼らは新しい映画の運動をしようとしたんですよ。それはゴダールとかトリュフォーなんかのヌーヴェルバーグにどっちかっていうと近い動きで映画の変革みたいなことをやろうとしたんですね。それがあとでうまく引き継がれていないというか、完全に繋がっているわけじゃなくて、それぞれがアートの領域の新しい動きだったり、ビデオという新しいメディアをどう扱うかみたいな、それぞれが別の性格づけがあるんで、それを全体としてどう捉えるかというと、非常に難しいというか、実験映画というジャンルが確立したかというとそうではないと思うんですよ。むしろ映画でも美術でもいいんですけど、新しいものを生み出す・革新してゆく精神みたいなものなんじゃないかと。」P:「なるほど」E:「そういう意味でいうと小田香さんの『セノーテ』はかなり実験映画のニュアンスを汲んでいる作品だと思うけど、彼女自身がどこまでそれを意識しているかはわからないですけどね。」P:「聞いてて思い出したのが、IAMAS行ってたと言ったらメディアアートって何と聞かれて答えに困ったことが…。あと実験映像の知識がないと、実験って聞くと、普通とは違うことをしているのかな?とざっくりしたイメージしか持っていなくて、色々聞いていくと色々流れがあるんだなーという、そんな知識しかないのですが…。」E:「実験音楽もジョン・ケージとかフィリップ・グラスまでははっきりしていて、大友良英さんはかなりその流れも引いていますが、ポピュラーな方面の仕事もされていますし、音楽でもそうだから、時代の変遷に左右されちゃうんで、あと時間が経つとそのメディア自体が古くなっちゃうんで。」P:「そうなんですよね。」E:「ビデオももうアナログビデオと見られて、それだけで古臭いとか見られてしまうのが残念。メディアは古いかもしれないけど、そこでやられていることは今でも通じるし、面白いものはたくさんあると思うんですけど。そこまで見ようと到達してくれる人が少ない。」P:「ジョン・ケージの作品とか見ると、今思いつくようなことはすでにこの人がやってたんだなと思ったりします。実験映像でもそういう人はいるんでしょうか?」E:「ブラッケージとかメカスかな。メカスは特にプライベートな感じで対象にアプローチするのが、今ではドキュメンタリーもそっちの方が主流になっちゃったけど、昔はもっとNHKが歴史を語るとか、大きなところから俯瞰して構えていた映像が多い中で、メカスは最初からコミュニケーションのツールとして用いていた、プライベートな視点で撮っていて、でもそこから歴史がすけて見えるのが、今見ても先駆的で学べることは多いんじゃないかと思います。」
– 次回へ続く –
Warabimochoja ワラビモ長者 愛知県美術館 主任学芸員 越後谷さんのお話 前半https://youtu.be/2swRKXfkbtw
Warabimochoja ワラビモ長者 愛知県美術館 主任学芸員 越後谷さんのお話 後半https://youtu.be/5wTFNnAYxLU
相米慎二https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E7%B1%B3%E6%85%8E%E4%BA%8C
大友克洋https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%8F%8B%E5%85%8B%E6%B4%8B
高田賢三https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%94%B0%E8%B3%A2%E4%B8%89
小田香「セノーテ」http://aragane-film.info/cenote/#unit_top
ジョン・ケージhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B8
大友良英https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%8F%8B%E8%89%AF%E8%8B%B1