+たまたまインタビュー+ vol.27「愛知県美術館の主任学芸員の越後谷卓司さんのお話 その3」

インタビュアー:フィリップ(ワラビモチ愛好会会長、IAMASアカデミー5期生)
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今回は、愛知県美術館の越後谷卓司さんです。2021年のはじめ頃にたまたまアートラボあいちに展示を観に行った時にお会いしたので、インタビューをお願いしました(インタビューは3/14に芸文センターにて)。
フィリップ(以下P):「学芸員の仕事を長年されて来られていらっしゃいますが、これまでやって来られてどんな感じでしょうか。」越後谷さん(以下E):「まあ、学芸員と言っても色々なスタンスの人がいて、扱う作品とか時代とかによるので、僕の場合対象が現役の作家とか、古くても100年前なので、そういう前提で言うと、作家がやりやすいように、やりたいことが実現できるようにしてきたのかな、と思うし、まず作家ありきで「オリジナル映像作品」の制作を担当しているんですけど、作家が企画を出してきて、そこをいかにして形にするかのお手伝いをしている感じです。」P:「へえー」E:「一方でもう完成してしまっている作品に関しては、自分なりの視点やテーマで上映会をやったりしているので、そこには作家の作品とは別の切り口があって、それには自分の持ち味は出ていると思います。」P:「今までの上映会で一番気に入っているものは何でしょうか?」E:「気に入っていると言うか、やって良かったなと思うのは、ジョナス・メカスの特集で1995年ですけど、ビデオ作品の上映をやったんです。メカスはフィルムの人で日記映画の創始者と言われているんですけど、そう言うのはもう見てたんですね。でもビデオも撮っていて、それはまだ見ていなくて、見てみるとフィルムだとコマ撮りですが、ビデオだと長回しなんですね。ひたすら人物とか風景を延々と撮っているんですけど、それが僕には面白かったんですね。なにぶん6時間くらいのすごい長いのを上映したりしていたんで、一般の人の反応はあまり良くなかったかもしれないんですけど、あの時点で紹介できたのは良かったですね。」P:「見る人は見るけど、普通の人は見きれないような感じだったでしょうか。」E:「長い作品に関してはそうですね、6時間だと1日潰すことになるし、見る側もよっぽど肝が座っていると言うか。」P:「ここ(芸文センター)に来られたばかりの頃ですよね。」E:「そうですね、ここには1992年に来たので、ただ、若いうちに勢いでやっちゃうのが良かったんじゃないかな。もっと年齢重ねるとなかなか手がつけられないと言うか、物事をわかってなかったので、やってしまったと言うところがあるので。」P:「勢いは大切ですね。あと、愛知芸術文化センターの方針みたいなことも教えていただけないでしょうか?」E:「出来た頃は劇場と美術館が一緒になった複合施設という意識がすごくあったんですね。フォーラムという吹き抜けを使ったりもしていましたが、段々やりにくくなって、今は組織もはっきり別れたので、複合性や連携が薄れたのはちょっと残念です。」P:「そういう流れはここだけじゃなく、もっと全体的な流れなんでしょうか?」E:「水戸芸術館とか、川崎市市民ミュージアムとか、愛知よりもっと前に出来たところも統合です。愛知より後の東京都現代美術館とか徐々に大型の施設でジャンルを特定するものが出来始めて、そちらの方が今は主流でジャンルを深められるみたいな感じになっている気がします。」P:「なるほど。」E:「そうは言っても、YCAM(山口情報芸術センター)みたいな施設もあるし、完全に流れが変わった訳ではないですけど、中で働いている人たちの意識と関係しています。」P:「ジャンルによって思想が違うということでしょうか。」E:「美術館は作品ありきで作品を守り伝える、公演は現場で新しいものを作っていくという意識があるので、もちろん現代美術みたいにその場で立ち上がっていくものもあるんですけど、常に作品の収集活動したり、それをどう見せるかみたいなことがある。お客さんの意識も、劇場で同じ演目が何年かごとに再演されて、作品が育っていったりするのを観て楽しむようになるとちょっと変わるのかな。そういう土壌が出来た時に初めて本当の意味での複合性のとっかかりになるかもしれないけど。」P:「思想が違う人が集まると難しいことも起こりますが、面白いと思います。ここ10年くらいアーカイブとか再演とかよく聞きますが、愛知県美術館でもアーカイブ活動が行われているでしょうか?」E:「作品だけでなく、資料ですね。作品が完成するのに至るスケッチとかメモとか記録とかそういったものも含めて、残していかないと、本当の意味で何が言いたかったのか伝えられないということで、それは世界的な課題になっています。過去の掘り起こしとかとても労力がかかるし、どう展示するのかなど…。」P:「時間と人手と大変ですね…。話が実験映像に戻るんですけど、その当時は新しいメディアが出てくると別のジャンルの作家が入ってきたということなんですよね。」E:「例えば画家だったら、キャンバスに描いた絵が動かせるから、動くことで違うものに変えられるとか、マン・レイも写真は動かないけど、動画にしたら写真では出来ないことが出来るとか、新しいメディアが出てきて浸透する時には皆飛び付くんだけど、本来は更にそのメディアを深く追求することが僕は重要だと思うんですけど、個々の作家は続けていても、一般的な認識はそうはならないですね。それは残念ですね。」P:「後、これが最後の質問なのですが、これからの実験映像に期待することは何でしょうか?」E:「今は大学で正規のカリキュラムで映像教育が行われるようになり、「ぴあフィルムフェスティバル」なんかでも大学対抗みたいになっていて、技術や俳優の演技レベルの水準が上がってきているのですが、正規の教育がなかった頃の、例えば園子温とか黒沢清とかも、やりたいという衝動だけで、誰からも頼まれなくても撮るみたいな…。学校教育の重要性は否定しないのですが、何かやむにやまぬ衝動にかられて撮ってしまうような冒険心というか、チャレンジ精神がどこかに残っていて欲しいなあと。技術的は低いけど思いが伝わってくるような作品は、かつては「イメージフォーラム・フェスティバル」に、何本かそういう作品はあったんですけど、今は技術水準が上がっているので…。」P:「なるほど、衝動的なものも残って欲しいですね。」E:「そうですね。」P:「長いインタビューにお答えいただき大変ありがとうございました!とても勉強になりました。」
Warabimochoja ワラビモ長者 愛知県美術館 主任学芸員 越後谷さんのお話 後半https://youtu.be/5wTFNnAYxLU
ジョナス・メカスhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%82%B9
マン・レイhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4
園子温https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%92%E5%AD%90%E6%B8%A9
黒沢清https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%B2%A2%E6%B8%85